予測どおりに不合理 増補版
「経済学」と「行動経済学」は違うようだ。行動経済学は、経済学と心理学の両面を持っているという。経済学の観点からいうと、人間は何かの行動をとるとき、その合理性を求める。100円のジュースと80円のジュースでは、80円のジュースを選ぶ。80円のジュースのほうが安上がりで、そのほうが「合理的」だからだ。しかし、アリエリー氏は、人間はある環境に置かれると、経済学では考えられない(合理的ではない)行動をとってしまうというのだ。経済学だけでは説明がつかないような行動。それを研究するのが、行動経済学である。
この本では、行動経済学に関する実験を、ユーモアを交えてながら紹介している。例えば……
無料で10ドル分のアマゾンギフト券をもらうか、7ドルで20ドル分のアマゾンギフト券をもらうという実験。あなたなら、どちらを選ぶだろう?私の場合は、無料なんだから前者を選ぶに決まってるじゃんと安易に考えた。この実験の参加者も、私と同じく前者を選ぶ人が圧倒的に多かった。
しかし、よく考えてみよう。果たしてこれは合理的な行動と言えるだろうか?分析してみる。前者は、無料で10ドル分のアマゾンギフト券がもらえる。つまり、10ドル分のプラス。後者は、7ドルで20ドル分のアマゾンギフト券がもらえる。つまり13ドル分のプラス。もうお分かりいただけただろうか?そう、合理的な行動をとるなら、後者を選ぶはずなのである。よくよく考えれば、後者のほうがプラス分が大きいのだ。この実験から、我々は「無料」という言葉に弱いことがわかる。無料のために、合理的な行動ができなくなってしまっているのだ。
「無料」に関する実験ではほかにもある。27セントのチョコと2セントのチョコを、それぞれ26セントと1セントに値下げ(どちらも1セントの値下げ)して売るという実験。値下げの価格はどちらも同じなので、予想通り買い手の割合に違いはみられなかった。では、25セントと0セントまで値下げ(どちらも2セントの値下げ)したらどうだろう?勘のいい人なら、もうお分かりだろう。お客は圧倒的に0セント、つまり無料のチョコを欲しがったのだ!値下げした価格はどちらも同じはずなのに。無料の恐ろしさを知った。
そのほかにも面白い実験がいくつか紹介されている。
旅行で、ローマとフランスのどちらに行きたいかは、そう簡単には選べないことだろう。ローマにはローマのいいところ、フランスにはフランスのいいところがある。ここで、ローマとフランスだけではなく、ローマ´(ローマより劣ったローマ)という選択肢を増やしてみる。すると、どうだろう?ローマとフランスは簡単には選べないが、ローマとローマ´なら明らかにローマのほうがいいに決まっている。ローマ´という選択肢を増やしたとたん、ローマを選ぶ人が圧倒的に増えたのである。
我々は何かを選ぶとき、絶対的な基準があって選んでいるのではない。選択肢の中から、相対的に選んでいるということがわかる。つまり、比較できる何かがないと選べないということだ。人間の、この相対的に選ぶという特性を生かし、著者は合コンにおけるアドバイスも提案している。(私なりにアレンジしてみたので参考に)
女性が結婚したい職業ランキングで毎回上位にくる、弁護士とパイロット。この二人が合コンを行うとする。あと一人はどういう人を呼べばいいだろうか。容姿も年収も同じくらいと仮定する。そこに、おとりの選択肢を入る。こういうことだ。
・弁護士(年収700万)
・パイロット(年収700万)
・弁護士(年収300万)
するとどうだろう?パイロットより、年収700万の弁護士を選びやすくはならないだろうか?こんなパターンもありだ。
・弁護士(イケメン)
・パイロット(イケメン)
・弁護士(ブサイク)
第三の選択肢(おとりの選択肢)があるだけで、こんなにも選びやすくなるのだ。あなたはおとりの選択肢要員にされていないだろうか?
ほかの実験には、
・高価な薬と安価な薬では、高価な薬のほうがよく効くという実験。
・安い栄養ドリンクより、高い栄養ドリンクを飲んだほうが、身体に効いた感じするという実験。
・不正を誘う実験で、モーセの十戒を読んでから実験に参加すると、不正をしないという実験。
・雰囲気が高級なレストランで食事をすると、味も高級に感じるという実験。
などなど。
こんなにも人間は合理的とは程遠い行動をしているのかと考えさせられる。その行動は、本当に合理的なのか?一度、自問してみる必要がありそうだ。
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