EQ こころの知能指数
今月の課題図書は、ダニエル・ゴールドマン著『EQ こころの知能指数』。こちらは1996年、今からなんと20年前に出された本である。20年たった今でも読み継がれている、ベストセラーだ。
著者のダニエル・ゴールドマンは、この本のタイトルでもある"EQ"という言葉を作った人物。EQとは、Emotional Intelligence Quotientの略で、日本語では「心の知能指数」と訳される。IQという言葉は聞いたことがある。EQはそのIQに対するもの。IQが単なる知能指数なら、こちらは“心の”知能指数だ。そう、この"心の"という部分が大事であり、この本の肝でもある。
EQとは何か?EQを高めるにはどうすればいいのか?この本を読めばそれらがわかる。
著者であるダニエルは、社会で成功するにはIQではなく、EQが必要だと言う。言い換えれば、社会で成功するにはいわゆる頭の良さは関係ないらしい。学歴社会で頭が良いことが良いこととされる現代において、この言葉は目から鱗だ。
では、具体的にEQとは何なのか?読み進めても、EQの定義や具体的な記述は見られない。しかし、読み進めれば著者の言わんとすることはわからなくもない。いくつかのキーワードが出てくる。
・自分自身の情動を知る
・感情を制御する
・自分を動機づける
・他人の感情を認識する
・人間関係をうまく処理する
・自信
・好奇心
・計画性
・自制心
・仲間意識
・意思疎通能力
・協調性
EQを高めるには、子どものころからEQを高めるような教育が必要という。とある学校で行っている「セルフ・サイエンス」という授業の期末問題は、「麻薬をやろうとしつこく誘われて困っている友人、あるいはいじめられて困っている友人を助けるのに適切な対応を説明しなさい」や「ストレス、怒り、恐怖に対処する健全な方法について述べなさい」といったものらしい。日本におけるIQを高めるためだけの期末試験とは大違いだ。
この本は、頭が悪い(IQが低い)人には希望の書になるかもしれない。学歴社会において、いい大学に行けなかかったことは、つまり人生の終了を意味する。しかし諦めなくてもいい。IQが低くても、この著者によればEQを高めればいいのだから!!
この本には心理学の世界で有名な「マシュマロテスト」についても触れられている。マシュマロテストについての詳しい記述は他に任せるとして、簡潔に述べると、目の前のマシュマロ(子どもの大好物)を我慢できる自制心が小さいころからある人は、将来お金持ちになるという心理学の実験。この実験は、EQが高ければ年収が高い=社会での成功を裏付けるものになっている。
自分に、目先の利益を我慢する自制心があるか。他人の気持ちを推察できているだろうか。EQを高める努力をしよう。
「然るべきことがらについて、然るべきひとびとに対して、さらにまた然るべき仕方において、然るべきときに、然るべきだけおこるひとは賞讃される」
アリストテレス
次回の課題図書は、『ビジョナリー・ピープル』を予定しております。
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